ドゥブロヴニクのあるクロアチアのダルマチア地方には、生牡蠣、タコのサラダ、イカのグリル、ブザラ、ペカ…などなど、美味しいものがたくさん。そしてその中でも特に「ドゥブロヴニクの食べ物」として知られているものといえば、何と言っても、リキュールで香りをつけたカスタードプリン、ロジャータ。
しかし、実はこの他にもう一つ、名物料理があるのです。それがシュポルキ・マカルリ、その名も「汚いマカロニ」!
今回は、ガイドブックではあまり見かけない隠れ名物、シュポルキ・マカルリについてご紹介します。
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シュポルキ・マカルリとは
シュポルキ・マカルリとは、ドゥブロヴニクの伝統料理の一つで、知られざる名物。
簡単に言うと、肉の切り落としを使い、シナモンなどの香辛料を加えて作るミートソースのパスタのようなもの(ただし肉はひき肉ではなくて小さめの一口大)。
上の写真だと、奥に見えるのがシュポルキ・マカルリです。
もともとまかない料理的な存在でわりと地味なので、あまり「名物です!」というプッシュは見かけませんが、とあるイベントには欠かせない伝統料理の一つでもあります。
シュポルキ・マカルリ、こんなときに食べます
シュポルキ・マカルリは、ドゥブロヴニクの守護聖人、聖ヴラホの祭典のときに伝統的に出されるお料理。
初日に提供されることになっています。
ドゥブロヴニクの旧市街を訪れると、街のあちこちに、ミトラ(司教の冠)をかぶり、片手に杖、片手にドゥブロヴニクの模型を抱え持つ老人の像があるのに気づくのではないでしょうか。
これは聖ヴラホ(※英語では聖ブレイズ)像。
聖ヴラホは敵国の奇襲の気機に際して市民の前に現れ、気機を未然に防いだとも言われていて、中世からずっと、ドゥブロヴニクの人々の篤い信仰を集めています。
守護聖人なので、ドゥブロヴニク共和国時代に作られた城壁の全ての門に聖ヴラホ像がついていて、旧市街に入ってくる人を上から見下ろして街を守っています。
この守護聖人ヴラホのお祭りが行われるのが毎年 2 月 3 日。
これは敬虔なクリスチャンの多いドゥブロヴニクが、普段の観光都市とは全く違う顔を見せる祝祭で、聖ヴラホ教会から運び出される聖遺物をひと目見よう、触れようと押し寄せる市民の姿を見ると、この土地で長く歴史を刻んできた普通の人々の暮らしが、突然に鮮明な実感を持って押し寄せてきます。
初詣にしても、クリスマスにしても、楽しいイベントくらいに捉えがちな私達からみると、ちょっと気圧されるような信仰のエネルギー。
そんな、普通の市民の皆さんにとって、非常に重要な宗教行事である聖ヴラホの日は、数日に渡ってお祭りが行われます。
そしてお祭りにはご馳走がつきもの。
…じゃあこのシュポルキ・マカルリもそんなご馳走の一つ?
と、思いそうなところですが、実はあんまりそうでもない!
聖ヴラホのお祭りは、ドゥブロヴニク旧市街だけでなく、その近隣の町や村の人々、それにドゥブロヴニク市民の親戚縁者が大勢おしかけ、皆で教会に行きます。
そして、そのものすごい人数が腹ペコでミサから帰ってくるのです…!!
これを迎え撃つには、お手頃価格でお腹にたまるメニューしかないでしょう。
ということで、各お家で大量のマカロニを茹で、ミートソースを作っておくわけです。
そこで何が起きるかというと、早く帰ってきた人がソースをがっつり食べてしまい、遅くなった人はソースがちょびっとしか残っていない…。
その貴重なソースを可能な限りペタペタまぶして、言い方を変えればできる限りソースでまんべんなくマカロニを汚して、頑張って食べる!
これが、「汚いマカロニ」という名前の由来なんだそうです。
今ではちゃんとゴロゴロお肉が入ったソースがかかっていますが、昔の人が「おぉい!ソース全然残ってないじゃん!!」なんて言いながら食べたのかな〜と思うと、なんだか面白くて、一度は食べてみたくなりませんか?
シュポルキ・マカルリが食べられる場所
シュポルキ・マカルリは、パスタを提供しているドゥブロヴニク市内のレストランであれば、けっこうな率でメニューに入っています。
新しくておしゃれなところよりは、昔からやっている、ローカル色のより濃いところであればだいたいあります。
クロアチア語では Šporuki Makaruli、英語では “Dirty Macaroni” と書いてあると思うので探してみてください。
シュポルキ・マカルリのレシピ
さてこのシュポルキ・マカルリ、日本で手に入る材料でも簡単に作ることができます。
クロアチアの人のレシピはやたらと量が多いので、適当に調整してくださいね。
材料
- 牛肉(一口大にカット) → カレー用のなどがちょうどいい: 800 g
- 玉ねぎ(粗みじん): 500 g
- にんにく(みじん切り): 3 〜 4 片
- 人参(みじん切り): 1 〜 2 本
- トマトペースト: 大さじ 3
- シナモン: 小さじ 1
- 赤ワイン: 1 カップ
- ローリエ: 2 〜 3 枚
- 塩・胡椒: 適宜
- ショートパスタ(ペンネ、リガトーニ、フジッリあたり): 600 g
作り方
- 牛肉に塩・胡椒し、冷蔵庫からだして 3 時間ほどおいて室温に戻す
- 大きめのお鍋に油をしき、牛肉を重ならないように並べて焼き色をつける。必要に応じて何回かに分けて行う
- 鍋から牛肉を取り出してとっておき、鍋を洗わずそのまま玉ねぎと人参を加えて、玉ねぎの色がかわるまで炒める
- にんにくとローリエを加えて軽く炒め合わせる
- トマトピューレとシナモンを加えて 2 分ほどコトコト加熱
- 牛肉と肉汁ごと鍋に戻し、赤ワインを加える
- 40 分 〜 1 時間ほどクツクツ弱火で煮込む
- パスタを茹でる
- 必要に応じて塩・胡椒を加えてソースの味を整え、パスタと合わせて完成!
仕上げにパセリのみじん切りとチーズを加えるといい感じになります。
チーズは癖のあるヤギのチーズなんかも意外とよくあうので、もし手に入るようだったらパルメザンの代わりに使ってみてくださいね!
ワインはできたらダルマチア産の赤ワインをどうぞ。
Amazon で売っているやつだと、ドゥブロヴニクの近で作っているプラヴァッツ・マリなんかがいいですね。
ざっと見た感じ&今探したあったのだと、この辺があいそう。
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