​ 【ペリェシャツ半島】ストン&マリストンの牡蠣

​ 【ペリェシャツ半島】ストン&マリストンの牡蠣

ストンとマリストンは、ペリエシャツ(Plješac)半島の入り口の両端にある小さな街。ヴェリキ・ストン(大きいストン)とマリ・ストン(小さいストン)でペアのようになっています。ドゥブロヴニクからは距離にして 60 km 程度、郊外行き路線バスで約 1 時間ほど行ったところにあります。

ストンには、数千年の歴史を持つ塩田や、世界有数の長さの城壁もありますが、クロアチアで「ストン」と言えば、何をおいてもまず「牡蠣」。質のよい牡蠣、そしてムール貝の産地としてクロアチア全土のみならず、ヨーロッパ中の食通によく知られています。


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ストンの牡蠣について

oysters in Ston
Image credit: Chimpanz APe via Flickr

マリストンに面するマリストン湾で養殖されているストンの牡蠣は、日本でメジャーなマガキではなく、ブロン種(Ostrea edulis、ヨーロッパ平ガキ)という、丸く、平べったいもの。希少価値が高く、フランスなどではマガキの数倍の値段で提供される高級品です。

牡蠣とムール貝の養殖が行われるマリストン湾は、緑豊かな森に囲まれ、石灰石の層でろ過された清らかな真水が常に水質を良好な状態に保っています。昔ながらの製法で手塩にかけて育てられた牡蠣は、クロアチアのみならずヨーロッパの食通の間でも人気の逸品。自然なミネラルの豊かな風味と、海水を感じさせる塩み。地産のワインと一緒にいただくと、もう止まらなくなります。

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マリストン湾における牡蠣の養殖の歴史

Mali Ston
マリストン湾

【養殖の始まり】

マリストン湾における牡蠣の養殖は非常に長い歴史があり、なんとローマ時代には、樫の枝を養殖筏として利用した原始的な養殖が始まっていたそうです。

現存する最古の文献は、17 世紀、ドゥブロヴニク共和国時代の牡蠣の収穫や販売の記録。18 世紀の文献になると、牡蠣の養殖許可に関する書類や、当時の牡蠣の養殖手順の説明書、養殖に携わる業者についての記録などもあるそうです。近代的なシステマチックな養殖業が始まったのは 19 世紀末で、続く 1936 年には、ロンドン万博において、ドゥブロヴニクの業者がマリストン産の牡蠣でグランプリ、金賞を受賞しています。

【戦乱による被害と現在の状況】

残念ながら、マリストン湾における牡蠣の養殖は、第二次世界大戦からクロアチア独立戦争へと続く戦乱の時期にほぼ壊滅に近いレベルまで落ち込んでしまいます。ユーゴスラビア紛争の際には資材や設備の多くが破壊されたり略奪されたりし、養殖業に従事する業者もほとんど撤退してしまいました。

戦後、壊滅寸前だった養殖業はまた息を吹き返しましたが、現在は違法業者の存在が問題になっています。まず、戦乱によって正当な事業許可を持つ業者が短期間で激減したため、産業にぽっかり穴が開いたような状態ができました。その穴を埋める形で多くの事業者が新規参入してきたのですが、正規の事業許可を取得しないまま操業を開始するケースが後を絶ちません。クロアチアの法手続きの煩雑さも影響し、現在も、違法操業が広く行われる状態が続いています。

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伝統的な養殖方法

マリストン湾では、ドゥブロヴニク共和国時代とそう大きくは変わらない、伝統的な養殖方法がほぼそのまま残り、守り続けられています。

牡蠣は卵から孵化したら海中を浮遊し、しばらくしたらどこかにくっついて育ちます。日本ではこの習性を利用して、ホタテの貝殻をワイヤーに取り付けて海に垂らし、子ガキを採取します(「採苗」といいます)。採苗した子ガキはまず比較的浅い場所の棚、のちに沖合いの深い場所の筏に移されて育てられます。成長した牡蠣のついたワイヤーは数百キロもの重量となるので、収穫にはクレーンを利用します。

マリストンでは、まず海中にネットを沈め、牡蠣がくっついて育つのを待ちます。1 年たったらネットを引き上げ、くっついている牡蠣の中からよい大きさのものを選んで外し、用意したロープにセメントで固定します。大きさが足りないものはそのまま海に戻します。

セメントでロープにつけられた牡蠣は筏に移し、 2 年ほど育てます。収穫の際も、全部に一度を収穫するのではなく、よい大きさに育ったものを外して、残りはまた海に戻します。

このような育て方をするため、マリストン湾で育つ牡蠣は、ほどよく成長して出荷されるまでに、何度か引き上げられ、人の手と目で成長を確かめられることになるそうです。収穫もすべて手作業。昔と違うのは、採苗の際、以前使っていた木の枝の代わりにネットを使うようになったこと、それから、ロープに牡蠣をくっつける際、卵と塩の混ぜ物の代わりにセメントを使うようになったことくらいで、後は何も変わらないということでした。

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よくある質問: 食あたりの心配は?

牡蠣の食あたりの発生の決め手になるのは鮮度ではなく生育海域の水質。マリストン湾は水質が非常によいため、基本的にはあまり心配しなくて大丈夫です。
実は、牡蠣は鮮度さえよければ生食できるわけではありません。牡蠣は、あの小さな体でなんと 1 日あたり約 400 リットルもの海水を濾過し、濾し取った成分を餌にして成長します。そのため、有害物質の含まれない海域で育った牡蠣は安全に生食できるのに対し、有害物質の多い海域で育った牡蠣は食あたりどころか、ひどい場合はそもそも食用にすらなりません。日本でも、生食用の牡蠣は限られた指定産地のみで育てられており、指定海域以外のものは、とれたての新鮮なものでも加熱用として出荷されます。

「ストンの牡蠣」の養殖地、マリストン湾は、ヨーロッパトップクラスの水質を誇るアドリア海の一部。さらに、マリストン湾には、天然の濾過フィルター、石灰岩の大地を通って磨き抜かれたディナルアルプスの雪解け水が豊富に流れこんでおり、水質は常に良好に保たれています。その上、周囲には大規模な居住地もなく、あるのは森と、比較的小規模なブドウ畑、オリーブ畑くらい。牡蠣の餌となる植物性プランクトンも豊富に生育する、生食用牡蠣の養殖に理想的な環境が整っています。また、衛生検査もしっかりと行われており、安全を確認してからの出荷が徹底されています。
もちろん、体質や、提供するお店の衛生状態、保存状態や期間にもよるので絶対とは言えませんが、生牡蠣を楽しむ場所としては抜群の、理想的な環境だと言えるでしょう。筆者個人的には、下手な日本のオイスターバーより安心して食べられるように思います。

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余談: つけあわせのレモン

Le ostriche di Ston, le più buone del mondo
Image Credit: Paola Sucato via Flickr

ドゥブロヴニクのあるダルマチア地方は、とても質のよいレモンやビターオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類の産地でもあります。割高なコストとマーケティング不足の影響で、基本的には地元のみで消費されている現状がもったいない、とても香り高い果実がとれるのです。

牡蠣のつけあわせで出てくるレモン、安い輸入品も多いのですが、場所によっては地元産のレモンが提供されることもあります。ストンの牡蠣を、フレッシュな地元産のレモンでいただくと、牡蠣がいっそう美味しくなるような気がします。

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