クロアチアのワイン: ワインの色と種類

皆さんは、クロアチアワインを飲んだことはありますか?

日本ではまだあまり知名度が高いとは言えないクロアチアワイン。しかし、実はクロアチアは最近、世界のステージで、個性的な美味しいワインの産地として、徐々に注目を集めつつあるのです!

この記事では、そんなクロアチアのワインの色と種類についてご紹介します。


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クロアチアワインの色と種類

クロアチアワインの色には、次の 4 通りがあります。

  • ロゼ
  • オレンジ(アンバー)

そして、種類にはこんなものが。

  • スティルワイン(いわゆる普通のワイン)
  • スパークリングワイン(泡)
  • アイスワイン
  • プロシェック

白ワイン、黒ワイン

「あれ?赤は??」
…と思った皆さん!気になりますよね?

実は、クロアチア語では、赤ワインのことを「黒ワイン」と呼ぶのです。

クロアチア語では、白ワインは bijelo vino(ビイェロ・ヴィノ)、赤ワインは crno vino(ツルノ・ヴィノ)。
白はクロアチア語で「ビイェロ」なのでなんの混乱もないですが、クロアチア語で赤は「crveno(ツルヴェノ)」であり、「ツルノ」ではありません。

じゃあ「ツルノ」って一体何か、というと、これが「黒」。
つまり、クロアチア語の世界では、「赤ワイン」は通常存在せず、赤ワインは「黒ワイン」と呼ばれているのですね。

クロアチア土着種の赤ワインは、とても濃厚な色のものが多く、明るめのものはあまり目にすることがありません。
確かに、赤というよりは黒と呼びたい気持ちもわかるような、ダークな色合いが主流なのです。

ちなみに、ちょっと調べてみたら、日本だとマルベック種のワインを「黒ワイン」と称して売っているケースが多いようですね。
マルベックも色が濃く、「黒ワイン」と呼ばれるのもよくわかるワインですが、やや青みがかったトーンのマルベックに比べ、同じく非常に濃厚ではあっても、クロアチアの黒ワインはガーネット、または血液のような感じの赤が多いです。

なお、黒ワインと呼ばれるほど濃厚な色だと、さぞや重くてどっしりしているのだろう…と思いませんか?

それが、意外とクロアチアの黒(赤)ワインは重くないものが多いです。
骨太だし、強いし、ファッと広がる膨らみや華やかな香りはあるけれども、どっしり重くはない。
とはいえ、軽くもない。

あえて言うならば(ワインの描写としてはおかしいと思いますが)、格闘ゲームの主人公キャラ的な、整った小顔だけどお腹まわりは筋肉バッキバキ、でも身のこなしはめっちゃ軽い…みたいな雰囲気ですね。
年をとっていい感じで円熟味を増すと、某○斗の拳でいうと、ラ○ウじゃなくてト○の方向に進みます。

うーん、全くイメージできない…と思った方、お気持ちよくわかります。
ごめんなさい。

筆者の限られた語彙力ではお伝えできないこの味を感じるためには、テランかプラヴァッツ・マリのワイン(日本でもいくらか売っています)、またはアメリカのジンファンデルを温度高めでお試しになっていただくのが手っ取り早いです😆
クロアチアは羊をよく食べる国ですし、ラムやうさぎ、イノシシ、野禽類などのジビエにもよくあいますよ!


ロゼワイン

 

 

ロゼワインとしては、国際品種のほか、土着種のテランやプラヴァッツ・マリを使ったものが最近増えてきました。

ちなみに、日本では、ロゼワインは「甘い、軽い、ピンク」な女子層狙いなものが多いように思いますが、ヨーロッパの多くの地域ではロゼ=夏向きのワイン的な扱いで、あまり甘い、軽いというイメージはないです。
クロアチアでも、ロゼの主流はわりとドライでキリッとした方向性ですね。
香りも、甘いイチゴよりは酸味のあるラズベリーなどを強く感じる物が多いです。

使われるブドウは様々ですが、テランやフランコフカのロゼはよくできたものがけっこうある印象。
実際、ワインコンテストなどで入賞するロゼもほとんどこれらです。

特にテランは、伝統的に赤ワインなのですが、最近ロゼが増えてきていて、クロアチアのワイン界も、最近になってその美味しさに「はっ!!」と開眼したような状態になっています。

ダルマチアでは、プラヴァッツ・マリのロゼを作るところがそこそこ出てきているんですが、個人的な感想としては、プラヴァッツ・マリはあんまりロゼには向いてないような…。

正直、美味しいと思ったのは、片手の指でも十分たりるくらい。
日本では売っていないし、そもそも生産量が少なすぎてほとんどお目に書かれませんが、ペリェシャツ半島のミロシュ(Miloš)のスタグナム・ロゼは、プラヴァッツ・マリのロゼなのに美味しかったです。


オレンジワイン(アンバーワイン)

 

オレンジワイン、またはアンバーワインとは、いわゆるマセレーテッドワイン(発酵初期段階に果皮も残して発酵させるため、タンニンや色素が抽出されて琥珀色っぽくなった白ワイン)のこと。

ジョージア産のものが有名ですが、実はこの製法、太古の昔にはむしろこちらが主流…というより、そもそも昔は赤ワイン、白ワインという区別がなかったんだそうです。
赤、白というより、ワインづくりの途中で果皮を途中で取り出すか取り出さないかの製法の違いくらいの認識が出発点で、むしろ新しいのは現代の白ワインのコンセプトと、その製法の方なんだとか。

実際のところ、果皮を漬け込むと酸化に強くなるため、暖かくて酸化の進みやすい地域の白はマセレーテッドワインが主流、冷涼な地域では酸化をそこまで気にしなくていいため、キレイに澄んだ今風の白ワインが作れる、という時代が長かったようです。
なんといっても、ワインがガラス瓶に入って、日持ちするようになったのは 1600 年代ごろ(ワインづくりの歴史からしたらつい最近)ですから、日持ちさせるための工夫として、マセレーションは大事なものだったわけですね。

現代的な白ワイン製法が一般的になり、温度調節のできる設備も手に入れやすいお値段になり、クリーンで雑味のない白ワインがもてはやされるようになった結果、伝統的なマセレーテッドワインの需要は徐々に下火になっていきました。

そして、そのトレンドに拍車をかけ、マセレーテッドワインを絶滅寸前まで追い込んだのが、実は政治なんです。
第一次世界大戦前後からの世界的な政情の変化により、アンバーワインが長く生き残ってきたバルカン半島からアドリア海沿岸の多くの地域が、イタリアやドイツ、ロシアなどに占領されることになりました。
そして、そちらの好みのワインづくりを強制されたり、昔ながらの製法を禁止されたり、ということが続いた結果、マセレーションを行う生産家はほぼ消滅してしまったんです。

しかし、近年この製法が見直され、アンバーワインならではの美味しさに開眼する人も増えてきて、もともとこの製法が存在したアドリア海沿岸での復活はもちろん、世界の様々な場所でアンバーワインが作られるようになってきています。
クロアチアでも、様々なワインメーカーがアンバーワインに挑戦していて、かなりできのいいものも多くなってきました。

なお、個人的な意見ですが、アンバーワインはすべてのワインの中で一番フードフレンドリー(食事に合わせやすい)なんじゃないかと思っています。
和食にもあうものが多いので、ぜひ色々組み合わせを楽しんでみてくださいね〜。


スパークリングワイン

クロアチア随一のスパークリングワイン産地といえば、クロアチア・ハイランドにあるプレシヴィツァ(Plešivica)。

海抜 500m くらい、年間の平均気温が 11 度くらいの高地にブドウ畑があり、そのうち 70% 程度が白ワインブドウの生産にあてられています。
主な品種はシャルドネ、リースリング、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、スィルヴァネル、トラミナッツなど。
畑は斜面にあることが多く、機械化が困難なので、手作業でのワインづくりが主流です。

また、プレシヴィツァ以外でも、最近、クロアチアの様々な場所でスパークリングワインの生産に挑戦するワイナリーが増えてきました。

上記、ロゼで名前の上がったテランなどは、ロゼのスパークリングも結構作られていて美味しいです!
クロアチアで一番広く作られ、消費されている白ワイン品種、グラシェヴィナや、同じく広く愛されているマルヴァジヤ・イスタルスカなどのスパークリングにも美味しいものが多いです。


アイスワイン

アイスワインとプロシェックは、いずれもブドウから何らかの方法で水分を抜き、甘み、糖度をました状態にしてから作るデザートワインです。

1 つ目のアイスワイン、これは、熟したブドウが寒気にさらされて、実の中の水分が凍り、それが溶けることで水分が抜けるのを利用して作るもの。

ドイツ、オーストリア、カナダあたりのものが有名で、特に生産の盛んなカナダ、オンタリオ州では、ice wine を 1 単語にまとめた “Icewine” を商標登録していて、ナイアガラの滝あたりで大量生産を行い、名物となっています。

さて、このアイスワインを作るには、実がちょうどよく熟した時に丁度いい寒気が来てくれることが絶対条件。

タイミングがずれると、実が熟しすぎて腐ってしまったり、発酵が自然に始まってしまったり。
または、実が熟す前に寒気が来て、実が熟さなかったり、または未熟なまま実が凍ってしまってだめになったり。

丹念に育てたブドウが全部ダメになってしまうリスクが常に付きまとう、タイミング勝負のワインなのです。

しかも、そうやって苦労して、運の力も借りて、やっとほどよく水分の抜けたブドウは、水分が抜けているため、そもそもワインになる果汁自体が通常よりぐっと少なくなります。
果汁が少なければ、必然的にできあがるワインの量も少ないですので、アイスワインというのは、小さな小瓶なのにいいお値段の高級品になるわけですね。

さて、こんな苦労を重ねて作られるアイスワイン、実はクロアチアの北部でも、少量ですが生産されています。
使用されるブドウはシャルドネ、ピノ・ブラン、リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ミュスカなど様々。

いずれも、アイスワインらしく濃厚なはちみつ、アプリコット、黄桃のような香りとこっくりした味わいがあり、それでいてベタベタと舌に残ることなく後味は爽やかにスッキリ!
何だったらサッパリしたシトラスの余韻を残しちゃう!
…というような雰囲気で、甘口ワインのベタつく甘さが好きではない方でも、意外とスッと飲めてしまって「あれ?甘いのに…美味しい…?」となってしまうかもしれない味わいです(筆者はなりました)。

個人的には、クロアチアのアイスワインでは、トラミナッツ(ゲヴェルツトラミネール)、ピノ・ブラン、リースリングのブレンドが一番美味しかったです。


プロシェック

プロシェックは、いわゆるパッシート製法、つまり収穫したワインをじっくり陰干しして、レーズンのような状態にしてからワインを作る製法で作られたデザートワイン。
イタリア(ヴェネツィア共和国)の一部だった歴史も長いクロアチアのダルマチア地方で昔から作られてきた伝統あるワインです。

しかし、たまたま名前がイタリアのスパークリングワイン、プロセッコと激似なため、2013 年頃、イタリアに「その名前使ってほしくない!」と EU に持っていかれてしまい、一時期プロシェックの名前が使えなくなりそうな気配になって揉めたりもしていました。
結果としては「やっぱり全然違うものだったね。そのままプロシェックって名乗っていいよ」ということになりまして、一件落着となっております。

実際、プロセッコとは似ても似つかないものなので、まあ、そうですよね…。

さて、プロシェックも、ブドウを陰干しして果汁を減らしてから作るので、生産量はとても少なく、お値段も普通のワインよりずっと高いです。
なんでも、同じ量のワインを作るのに、普通のワインの 7 倍ほどのブドウが必要なんだとか。

そのため、基本的には日常的に飲むようなものではなく、お祝い事などの時に提供される特別なものです。
今ではやる人も減ってしまいましたが、子どもが生まれた年に買って、結婚する時まで取っておく、という習慣もあったそうですよ。

実際、先日筆者が参列した現地の友人の結婚式では、お父上の秘密のワインコレクションの中で 30 年以上にわたって大事に保管されてきたプロシェックが出てまいりました。
まろやかで、優しくて、甘くて、濃厚で、でも後味はやっぱりスッキリしていて、とても美味しかったです。
いい経験させてもらった…。

なお、プロシェックを作るのに使われるブドウは、作られる土地によって、白のルカタツ(Rukatac、別名マラシュティナ)、ヴガヴァ(Vugava)、ボグダヌシャ(Bogdanuša)、赤のプラヴァッツ・マリ(Plavac Mali)など様々。
高級品と言われるものには、ベースになる白ブドウとプラヴァッツ・マリを混ぜて使っているものも多いです。

手間もかかるし、市場も小さいしで、一時は作り手が激減してしまったプロシェック。
最近は志の高いワイン生産家の皆さんがリバイバルに力をいれているそうで、ごく少量ではあっても継続してプロシェックを作るところも増えてきているそうです。

昔、カナダのオンタリオに住んでおり、アイスワインを飲む機会もそこそこあったにもかかわらず、あまりピンとこなくて「甘いワインはやっぱり好きになれないな〜」などと言っていた筆者。
ハンガリーの貴腐ワイン、トカイ・アスーをきっかけにデザートワインに完全に目覚めてしまった今では、クロアチアのアイスワイン、プロシェック、いずれも見かけ次第条件反射のように購入してしまうようになりました。

甘口はちょっと…とお考えの皆さん、もしかしたら皆さんも突然目覚めてしまうかもしれませんよ?
特にプラヴァッツ・マリを使ったプロシェックなどは、世界のどこを探してもダルマチアにしかないと思うので、ご旅行中に見かけたらぜひ試してみてくださいね!


日本でも買えるクロアチアワイン

テランのロゼ、スティルとスパークリング 2 本立て!スティルのほうがファキン(Fakin)の「ロゼ」、スパークリングのほうはトラパン(Trapan)の「チェ(CHE)」。両方日本で買いました

さて、日本でも、クロアチアワインは少量ながら販売されています。

筆者がよく使うのは Amazon (← リンクをクリックすると「クロアチアワイン」の検索結果がでるはず)ですね…。
もう Amazon がないと生活が成り立たない。

Amazon で売っているものの中だと、ファキン(Fakin)スカラムーチャ(Skaramuča)スティナ(Stina)あたり、まあ何を飲んでもハズレなし。
クロアチアでも世界でも賞をかなり取ったワインが揃っています。
スティナは、クロアチア大使館にお邪魔した時に、大使も美味しいとおっしゃっていましたね。

その他、1 種類しか見つからなかったけれどミロシュ(Miloš、ミロスって書いてありましたがミロシュです)、これも非常にカリスマのある、現地でカルト的なファンも多いワインメーカーさんです。
日本では売っていないんですが、よくできた年のブドウでしか作らないスタグナム(Stagnum)シリーズがすごく美味しいんですよ…。
ここはプラヴァッツ・マリ 100% のプロシェックも作っていて(それも「今年はプロシェック向きだ!」と思うものが取れた時しか作らない)、こちらも日本では買えないというか、クロアチア国内ですら入手困難ですが、いい出来なんですよね。

スパークリングはフェラヴィノ(Feravino)もおすすめ。
ここのスパークリングはけっこう賞も多くとっていて、よくできていますね。
ちなみに、フェラヴィノのメルロはクロアチア航空のビジネスクラスで出してくれるワインです。

Amazon 以外であれば、Amazon楽天に出店されているアドリア・トレードさんが都内と神奈川県を中心に時々イベント出店やポップアップストアを出されるので伺ったり、オンラインショッピングなら Vins d’Olive(ヴァンドリーブ)さんのオンラインストアや、世界の色々なところのワインを扱っている葡萄屋さんのオンラインストアは掘り出し物が結構あるのでお世話になっています。

ヴァンドリーブさんは、東ヨーロッパを中心として、オーガニックワインやビオワインを中心とする商品を揃えていて、こだわりと目の付け所が素晴らしい。
クロアチアワインも、思わず「なるほどそこを選びましたかー」と唸ってしまうような、いいところを狙って入れておられますね。
たいへんありがたいです。

日本で手に入るクロアチアワインでも、美味しいものが増えてきて非常に喜ばしいところですが、他にもまだまだ現地には美味しいワインがあるんですよね…。
皆様、クロアチアへお越しの際はぜひ、色々なワインバーへ行っていただいて、なんだったらはしごも沢山していただいて、テイスティングコースがあったら頼んでみてくださいね!

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