ドゥブロヴニク旧市街から目と鼻の先、フェリーで 10 分ほどの場所にあるロクルム島。
様々な歴史的人物にまつわる伝説・史実が数多く存在するこの小さな島は、現在は自然保護区となっていて、野良うさぎ、野良クジャクがうろうろする中、市民が憩う素敵な場所になっています。
今回は、そんなロクルム島の魅力についてまとめます。
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ロクルム島とは
ロクルム島は、旧市街の港の沖に、まるで港をガードするかのような位置にある無人島です。
旧市街側からみると、ちょっとクジラっぽいシェイプでかわいらしい。
島内は自然保護区になっていて、いくつかの遺跡と植物園、それに「ロクルムの死海」と呼ばれる小さな塩水湖などがあります。
自然保護区ではありますが、公園のような感じに整備されている場所もあり、そこでは地元の子ども達がサッカーしていたり、大人がゆっくり散策していたり。
ビーチもあって、もちろん泳いでもかまいませんし、なんだったら、一箇所ヌーディストビーチもあるので、そちらで裸族気分まで味わうことができてしまいます(ほぼヨーロッパのご年配の方しかいませんが)。
のどかで平和な島なんですが、実は様々な伝説や史実に彩られた島で、なんと呪いまでかかっているため、ここで夜を過ごすことは禁じられているという、たいへん面白い場所でもあります。
ロクルム島の見どころ
ロクルム島にある主な見どころには次のようなものがあります。
- ベネディクト会修道院跡
- 植物園
- ロクルム島の死海
- ロイヤル要塞
- 自然いっぱいの島内散策コース
- レストラン「ラクロマ」
- ビーチ
- 野良うさぎと野良くじゃく
ベネディクト会修道院
ロクルム島は、長いこと(文書に残る記録では 915 年前後から、ドゥブロヴニク共和国が滅亡した 19 世紀まで)ベネディクト会修道院の拠点でした。
現在残る修道院は、次の 3 様式が混在する建物となっています。
- 12 〜 13 世紀のロマネスク・ゴシック様式の建築
- 15 〜 16 世紀のゴシック・ルネサンス様式で建て増しされた建築
- 19 世紀に入ってからハプスブルク・オーストリア帝国のマキシミリアン大公によって建てられたネオ・ゴシック様式、ネオ・ルネサンス様式、ネオ・ロマネスク様式の混合建築
このうち、15 〜 16 世紀に建立された部分は 1667 年のドゥブロヴニク大地震でその大部分が崩壊してしまい、現在は回廊を含む一部のみが残っているにすぎません。
そして、この崩れずに残った回廊の入り口には、次のような、示唆にとんだ言葉が刻まれています。
“CONCORDIA RES PARVAE CRESCUNT. DISCORDIA MAXIMAE DILABUNTUR.”
これは、英語にすると「Unity makes small things grow; the greatest will fall if disunited.」、日本語では「調和は小さなものを大きく育てる。強大なものも、調和がなければ滅ぶ」といった意味になります。
「一致団結は大きな結果を生むんだよ、強い力があっても、団結が欠けていたらそれは崩れてしまうんだよ」
…というメッセージですね。
この島の本来の所有者であったベネディクト会は、最終的に非常に不本意な形で島を追われることになります。
その際、島にある呪いを施したそうで、実際、島を力で我が物とした人々や政府は、次々と変死、凋落の憂き目にあい滅んでいきました。
その歴史を考えると、この言葉が、崩壊した建物の中でわずかに残った部分に刻まれているというところに、なんともいえない深さを感じます。
植物園
ロクルム島は、短期間ながら、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の弟で、後にメキシコ皇帝となったものの、革命により処刑されてしまったマキシミリアンに所有されていた時期があります。
現存する植物園を始め、ロクルム島の庭園の大部分は、マキシミリアン統治下で再整備されたもの。
植物園は、自然科学に深い造詣のあったマキシミリアンの意向で、世界各地から植物(※特に薬効のある植物や農業、林業への貢献が期待される植物)をドゥブロヴニク周辺の気候に移植した場合、どの種がどのように適応するかを研究することを主目的の一つとして作られました。
そのため、植物園になっている一画は、きれいな庭園というよりは薬草園みたいな雰囲気です。
しかし、1991 〜 1992 年の独立戦争時、ロクルム島も攻撃対象となり、庭園は 50 発もの砲撃を受けて壊滅。
それまでに収集された貴重な資料も、ほとんどが焼失してしまいました。
戦後、この植物園はドゥブロヴニク大学の海洋・沿岸研究部門の管理下に置かれ、ゆっくりと、しかし徐々に修復されつつあります。
ロクルム島の死海
フェリーを降り、左手の方から島を回っていくと、島の中に小さな湖(というか池?)が見えてきます。
こちらが、「ロクルムの死海」と呼ばれる塩水湖(池サイズ)。
こちら、実は地下で海と繋がっているため、海よりは多少塩分濃度が高いですが、体がものすごく浮いたりするわけではありません。
しかし、孔雀が歩き回る森の中で、透明度の高いエメラルドグリーンの塩水湖で泳ぐというのはなかなかユニークな経験。
ロクルム島観光の一つの目玉になっています。
なお、これ以外にも、ロクルム島にはいくつかビーチがあり、いずれもとても綺麗です。
ヌーディストビーチも一箇所ありまして、これはフェリー発着場から、左回りに島を回っていくと近いです。
ヌーディストビーチ利用者は、地元の友人情報によると「ほとんどドイツ人のおじいちゃん」だそう。
このヌーディストビーチ、大人気アクティビティであるシーカヤックがわりと近くを通っていくので、遠目とは言え丸見えっちゃ丸見えなんですが、通常誰もいないか、またはいても本当におじいさんばかりです。
ロイヤル要塞
ロイヤル要塞は、ナポレオン率いるフランス軍によって築かれた要塞。
ロクルム島の最高ポイントにあり、ドゥブロヴニクの城壁が一望できます。
ロイヤル要塞までの道は石がゴロゴロした傾斜のきつい登り道になっていますが、努力の甲斐のある絶景が待っています。
ハイキング気分で周りの植物を楽しみながらゆっくり登るのもおすすめ。
筆者は次回行くときはトレッキングシューズ、ないしは最低でもガチに運動できる靴でいきます。
ロクルム島の自然
ロクルム島は自然保護区となっており、現在は無人島。
そのため、島はどこへ行っても自然がいっぱいです。
島内にカフェやレストランもありますが、ドゥブロヴニクから食べ物、飲み物を持参してピクニックするのも気持ちがよくておすすめです。
レストランについて言うと、島唯一のレストラン「ラクロマ」は、結構評判よいです。
お料理も美味しいですし、ワインもいいものを置いています。
テラス席で、パラソルの下でご飯を食べると、休日感がすごくあってとても気持ちよい。
このレストランの近くには、ちょっとした広場のようになっているところがあり、ベネティクト会時代から残る、非常に貴重な古いオリーブの木立があります。
広場にはサッカーゴールがおいてあり、子どもたちがフットサルをしていたりしますが、ちょっと困るのが野良うさぎと野良くじゃく。
そこら中にうじゃうじゃいるので、子どもがボールをけるとうさぎもびっくりして一緒に走っちゃったりして、なかなか愉快な感じになります。
たいへんかわいい。
癒やし成分しかない。
クジャクは、見た目は綺麗で動きもゆったりで優雅。
ヒナは体が柔らかくて、とてつもない角度で足を伸ばしていたりしてかわいいです。
ただ、彼らは声がちょっと残念な「ぎゃあああー」という声なので…
ロクルム島への行き方&料金
ドゥブロヴニクの旧港から、ロクルム島へのフェリーが出ています。
フェリーと言っても大きな木造ボートなので、スピードが遅く、地元の友人は「バケツ(※日本で言うたらい船的な感覚らしい)」呼ばわりしていました。
シーズンや海の状態により本数やスケジュールは異なりますので、旧港に行って、ロクルム島行きフェリー乗り場のカウンターで確認することをお勧めします。
なお、12 月 〜 3 月はフェリー自体が運休になります。
チケットは、船着き場にでているカウンター(ロクルム行きの木造ボート
フェリー料金は年々値上がりしていて、2020 年の料金は次の通り。
ロクルム島で夜を過ごすと呪われてしまうため、きちんと帰ってこられるよう、すべて往復チケットになっています。
- 大人: 200 クーナ
- 5 〜 15 歳の子ども: 30 クーナ
- 4 歳以下: 無料
ちなみに、ドゥブロヴニク・カード 3 日券または 7 日券を持っていると割引がききます。
3 日券は 30%、7 日券は 50% となかなか太っ腹なお値引きになるので、お持ちの方はぜひご活用を。