​ドゥブロヴニク旧市街の観光スポット: 旧総督邸 / 歴史文化博物館

ドゥブロヴニク旧市街の観光スポット: 旧総督邸 / 歴史文化博物館

クロアチアを代表する観光地、ドゥブロヴニク。
今はクロアチアの都市ですが、クロアチアの一部としての歴史より、独立した都市国家、ドゥブロヴニク共和国(※イタリア語ではラグサもしくはラグーサ共和国)だった歴史の方が長い、クロアチアの中でもちょっと特殊な街です。

今回は、ドゥブロヴニク共和国時代に総督のお屋敷として使われていて、現在は歴史文化博物館として一般公開されている、ドゥブロヴニク旧市街の旧総督邸についてご紹介します。


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旧総督邸とは

ドゥブロヴニク共和国は、その名の通り共和制をとっていて、選挙で選ばれる議会(※小評議会と大評議会の二部制)と、それを統括する総督とが政治を執り行っていました。

この総督の住居兼オフィスが、現在歴史文化博物館として一般公開されているドゥブロヴニクの旧総督邸です。

ちなみに、「住居兼オフィス」と簡単に書きましたが、「オフィス」といっても総督の執務室のみを意味するわけではなく、その他に次のような機能も担っていました。

  • 小評議会の議場ほか、いくつかの政府機能の本部
  • 裁判所
  • 武器庫
  • 火薬庫
  • 牢屋

そんなに大きい建物ではないのですが、機能もりもりで、まさにドゥブロヴニク共和国行政の中心点だったと言える建物だった、と言うことができるでしょう。


ドゥブロヴニク共和国総督、こんなところが超ユニーク!

ドゥブロヴニク共和国は、地理的にちょうどキリスト教圏(ローマ帝国やオーストリア・ハンガリー帝国など)とイスラム教圏(オットーマン/オスマン・トルコ帝国)。との境目にあります。
境目どころか、オットーマン帝国の版図拡大につれ、周囲がすべてオットーマン帝国の軍門に下ってイスラム教圏となってしまい、イスラムの海に浮かぶキリスト教圏の小島のようになった時代もけっこう長い。

このような難しい場所では、潤沢な資金力、優れた外交力などを駆使して国を守り続ける、長期に渡る、並々ならぬ努力が必要です。
そして、外向きの努力にに注力できるようにするためには、前提条件として、国内が安定していて、内政に過剰なリソースをとられない状態を作らなくてはなりません。

長期的な国内の安定の実現には様々な要因がからんできますが、そのうちの一つに、権力の集中を避け、分散した権力がお互いを補完・牽制しあう体制づくりが挙げられます。

ドゥブロヴニク共和国で実現されていた、この権力の集中を避ける取り組みの一つに、総督という、議会を統括する立場のあり方が含まれています。

総督の権力が大きくなりすぎ、個人の利益が公共の利益に悪い影響を与えることがないよう、ドゥブロヴニク総督の任期はなんとたったの 1 ヶ月という、極端に短い機関に設定されていました。

転勤や異動、転職、それにお引越しなどを経験されている方はよく分かると思うのですが、新しい環境や立場に移行した 1 ヶ月後って、「ちょっと慣れてきた」くらいですよね?
どんな有力者でも、どれだけ強いコネや知識、経験、財力などがあっても、さすがに 1 ヶ月では、周りを牛耳れるほどのパワーを手にするのは至難の業。

管理人
頭いい!

そして、総督は選挙で選ばれるのですが、事前の根回しだの、利害関係によるプレッシャーだので選挙結果が左右されてしまうのを防ぐ仕組みが幾重にも設けられていました。
そのため、不正行為で選挙結果を動かしたとしても、そのリスクやコストに見合うほどの見返りが得られない → 無駄だからやらない、という形になっていたのです。

さらに、一度総督に選ばれると、原則として任期の 1 ヶ月間、総督は外出禁止で総督邸に缶詰になります。

管理人
現代の社畜も真っ青の激務!

なんとなく、中世の貴族で、一つの国家の統括者である総督となると、贅沢三昧の優雅な暮らしをしていたようなイメージを持ってしまいがちですが、ドゥブロヴニク共和国総督については、そんな悠長なこと言ってる場合じゃない、仕事仕事!という感じだったわけですね。

旧総督邸の中に入る時、入り口の上の石に注目してみてください。
その当時の総督の責務を象徴する言葉が刻まれていますよ!
刻まれている言葉は…

Obliti privatorum publica curate

これは、日本語に訳すと「私事は忘れ、公事に集中せよ」といった意味。
これぞまさに、公僕の長たる「総督」が持つべき姿勢、理想のあり方ですよね!


旧総督邸のみどころ

旧総督邸には、次のような見どころがあります。

  • ユニークな建築様式
  • 内装と展示品
  • 旧総督邸を利用するイベントの数々

ユニークな建築様式

旧総督邸は、ゴシック、ルネサンス、バロックなど様々な建築様式が一つの建物の中に混在しています。

これは、旧総督邸がその歴史の中で、数多くの損壊と修復を重ねてきているため。

ドゥブロヴニクは地震によって何度か大きな被害を受けてきた都市です。

そのため、旧総督邸も、地震、火事にはじまり、さらには貯蔵してあった火薬の爆発などの原因で、幾度となく大きなダメージを受けてきました。
そのため、数世紀に渡って、数々の建築家による修復、再建が繰り返され、結果として、現在の姿になった、ということです。

内装と展示品

ドゥブロヴニク共和国は、貿易によって巨万の富を築いた都市国家。

小国ながら、大航海時代「アドリア海の女王」と呼ばれた大国、ヴェネツィア共和国をむこうにまわして、アドリア海の海運業の覇権を求めてしのぎを削ったやり手国家です。

総督邸は華美ではないのですが、質のよい家具、絵画、彫刻などで飾られており、これなら、1 ヶ月間閉じ込められてもまあ大丈夫かな、と思える、居心地のよい空間になっていることがわかります。
執務室や議場、それに牢屋などのお部屋(?)も当時のまま保存、展示されています。
牢屋は、地下のものすごく狭い、窓もなにもない暗い穴蔵のような場所。

ちなみに総督は、裁判の結果を通知する役割も担っていたそうです。

自分が有罪を宣告した相手が、自分の住居の地下に閉じ込められている状態で過ごすのって、どういう気持だったんでしょうね…。

お部屋以外の展示物としては、衣装や、貿易で収集した製品や器具、美術品など様々なものがあげられます。
博物館としては小規模ですが、歴史や建築に興味のある方には面白い場所なのではないでしょうか。

当時日本から輸入された陶器の壺などもいくつかありました。
意外なところで日本に出会って、ちょっと感激!

旧総督邸を利用するイベントの数々

旧総督邸の美しいファサードと、建物の中心にある広間は、様々なイベントに活用されています。
演劇の舞台になったり、音楽会が開かれたり。

管理人
管理人のお気に入りは、ドゥブロヴニク交響楽団のコンサート!

きれいな手すりのある石造りの広間での演奏会、なんともいえない雰囲気です…😍

なお、ファサードでコンサートが行われる時は、ファサードをステージにして、客席は屋外に椅子を並べ、ロープで区切って作ります。
チケットを購入した人は、ロープの中の椅子に座って優雅に楽しむことができ、チケットを買っていない人は、通りすがりにその音楽を楽しむことができるという、とても素敵な仕様です。

ロープで区切られているだけですが、お金をだしたパトロンの皆さんは綺麗に着飾って参加されていることが多く、とっても優雅でクラッシィ。
パトロン以外の人は、そういったパトロンの皆さんの出資によって、美しい音楽や文化にふれる機会が得られる。

これ、特に、この街に暮らす子どもたちにとって、これ以上ない文化教育の機会ですよね~。
普段は観光客の間をすり抜けて旧市街内外を駆けずり回っている暴れん坊達が、お目々をまんまるにして、夢中でクラシック音楽に聞き入る姿などを見ると、歴史ある街の文化の厚みって、こうやって受け継がれていくんだな~と、とても暖かい気持ちになります。

なお、このファサード、普段は通行人がその階段状になった部分にちょっと座って休憩していたり、猫たちが集まって丸くなっていたりする、ドゥブロヴニク旧市街の憩いスポット。
夜にライトアップされた姿もとても綺麗です。

旧総督邸の営業時間

  • 3 月下旬 ~ 11 月上旬:
    • 9:00 ~ 18:00
  • 11 月上旬 ~ 3 月下旬:
    • 9:00 ~ 16:00

*2020 年 3 月現在
*営業時間は変更になることがあります。詳細は公式サイトでご確認ください。

旧総督邸と付属ミュージアムショップへのアクセス

旧総督邸は、ドゥブロヴニク旧市街の港近くにあります。

まず、ドゥブロヴニク旧市街のメインゲート、ピレ門から旧市街に入り、メインストリート、ストラドゥン(プラツァ通り)を反対側の端につくまで直進します。

突き当りにある、騎士の像(オルランドの柱)がある広場、ルジャ広場についたら、オルランドの柱の背中側にまわりましょう。
目の前にある聖ヴラホ教会の左横の道に入ると、突き当りにもう一つ教会が見えます。
こちらがドゥブロヴニク大聖堂。

ドゥブロヴニク大聖堂のちょっと手前、左側に、美しいアーチのある柱と、階段状のベンチが特徴的な、細長い建物があります。
こちらが旧総督邸。

なお、付属のミュージアムショップだけ利用したい場合は、旧総督邸を通り越して、左折すると、港に出る門があります。
この門の内側、港を正面にして左手が、総督邸付属のミュージアムショップになっています。

お土産向きの小さなグッズが置いてあるのでけっこうおすすめですよ😉

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