​ ドゥブロヴニク旧市街の観光スポット: 海洋博物館

海洋貿易の要所に位置し、中世には、商業や外交で類まれな成功を納めた独立国家として発展してきたドゥブロヴニク。
小国ながら、周辺の大国(ヴェネツィア共和国、ハプスブルグ帝国、セルビア王国、オットーマン帝国など)を相手に、数百年の間したたかに生き延びたユニークな歴史をもっています。

そんなドゥブロヴニクの成功を支えたのが潤沢な資金。
そして、その資金を生み出す大きな要因の一つが海洋貿易でした。

今回は、そんな歴史を垣間見ることのできる、ドゥブロヴニクの海洋博物館についてご紹介します。


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ドゥブロヴニクと海洋貿易

ドゥブロヴニクは、今ではクロアチア随一の観光都市として知られ、クロアチア観光のパンフレットやウェブサイトでもおなじみです。
しかし、ここがクロアチアの一部になったのは、そんなに前のことではありません。

ドゥブロヴニクは、19 世紀までクロアチアの他の部分とは別の都市国家、ドゥブロヴニク共和国だったのです!

管理人
イタリア語の呼称は「ラグサ(ラグーサ)共和国」だったので、こちらの名前で歴史に登場することの方が多いです
地元友人
…まあここはイタリアじゃないんで、「ドゥブロヴニク共和国」が正しいけどね
管理人
…と、ドゥブロヴニク共和国末裔の皆さんによく訂正されるので、当サイトでは「ドゥブロヴニク共和国」という呼称の方を採用します!
 

キリスト教圏とイスラム教圏の境目に位置し、天然の良港を要するドゥブロヴニク。
当然、あっちこっちから狙われ続けていたのですが、そこはやり手のドゥブロヴニク共和国。

お金にものを言わせたり、強国同士の争いに便乗したり、表面上従属を約束しながら、いつの間にか事実上の自治を実現したり。

世界中の黄金を積まれても自由を売り渡すことはない」との言葉を掲げ、ヴェネツィア共和国、ハプスブルク帝国、オットーマン帝国といった列強がしのぎを削る中、数百年に渡って自治を守る小国というのは、驚異的としか言いようがありません。
国家ぐるみで多重スパイ的な活躍もしつつ、どの陣営からも「敵方につかれるよりは、適当に泳がせて役に立ってもらった方がいい」と思われる、危ないけれども美味しい位置に自分をもっていくあたり、まさに天才的。

さて、ドゥブロヴニクのこのような成功を支えた一つの要因は、間違いなくこの海洋貿易と、そこから得た莫大な資金にあります。

時はちょうど大航海時代に突入し、海洋貿易はまさに当時の花形産業。
そして、キリスト教圏とイスラム教圏の境目というのは、危険だけれども、貿易の中継ぎ拠点としては非常に美味しい場所でもあります。
さらに、ドゥブロヴニクには「白い黄金」と呼ばれ高値で取引されていた塩を産出する塩田まで持っていました。

この地の利と産物を活かすため、ドゥブロヴニクは各国の間で抜け目なく立ち回って、関税回避と通行の自由を確保。
更に、当時としては考えられないほど先進的な、異教徒でも市内で平等に商売できる体制を整え、世界的に重要な交易拠点というポジションを確立して、どんどん富を増やしていきました。

管理人
今でも、ドゥブロヴニクの人は性格や考え方、生き方がクロアチアの他の部分とはかけ離れているところがけっこうあるそうです
地元友人
私はザグレブ出身だけど、ドゥブロヴニクの人って本当に、他のところの人と全然違うよ。

お金持ちで、働かなくてもお金が入ってくる人も多いしね

余談ですが、管理人、ドゥブロヴニク共和国って、なんだか、戦国時代 〜 江戸にかけての堺に似ているなあと思うことがあります。
時期もおおむねかぶっていますし、商業で成功し、自治を勝ち取って抜け目なく生き抜くところなど、共通要素がけっこう多い気がする。

また、小さな都市国家ながら、自らを交易のハブと化することで成功を納めたという点では、もしかしたら現在のシンガポールと似た部分もあるかもしれませんね。

海洋博物館で見られるもの

海洋博物館は、旧港の先端に位置する聖イヴァン(聖ジョン)要塞の一部を使った施設です。
使用しているのは要塞の 2〜3 階部分のみで、入り口も 2 階にあります。

展示されているのは、中世の海洋貿易で取引された商品の数々、船上で使用された道具類、書類や目録、絵画など。
船舶の模型や当時使用された船のパーツなどもあります。

大航海時代に憧れを感じる方、単純に船好きの方はけっこう楽しめるのではないでしょうか。

ちなみに、聖イヴァン要塞の 1 階部分は水族館になっていまして、こちら入り口は別ですが、同じ入場券で入ることができます。

海洋博物館へのアクセス

海洋博物館のある聖ジョン要塞は、ドゥブロヴニクの城壁の、旧港の入り口にあたる部分に組み込まれたビルトイン型の要塞。
上述の通り、1 階が水族館、2、3 階が博物館です。

入り口は、城壁を歩いて回っている場合は、途中でそのまま立ち寄れる場所にあります。

城壁を回っていると分かると思うのですが、ピレ門側の入り口から入ってずーっと外周を回っていくと、旧港に入るところで一端城壁が行き止まりになり、ちょっとした広場のようになった場所に出ます。
ここから、階段で下に降りていくのですが、この階段、そのまま一番下まで行くと旧市街に出てしまいます。

城壁ウォークを続ける場合、階段の途中、降りていく場合は右手の壁にある小さな開口部をくぐって、旧港側に出るのですが、その、出たところの右手にあるのが海洋博物館の入り口。

管理人
旧市街から海洋博物館に行くには、逆に、この階段を旧市街側から上って、同じ開口部をくぐる、という形になります

城壁ではなく旧市街内から海洋博物館に行く場合は、ドゥブロヴニク大聖堂からスタートするとわかりやすいです。

大聖堂の正面入口を目の前にして立つと、左手に、数段高くなった路地があります。
路地の上に建物がかぶっていて、路地の部分がトンネル状になっているので、階段をあがって、この路地を左にすすみます。

管理人
ちなみにここ、Star Wars エピソード 8 の撮影ロケ地です。
カジノ惑星、カント・バイトで、ローズとフィンが逃げるシーンに使われていました。

さて、このトンネルを抜けて、そのまま突き当りまでずーっと行くと、ミニチュアのギロチンがおいてある小さなお庭のような場所にでます。

管理人
ちなみにこのお庭的な場所に行き着くすぐ手前には、ドゥブロヴニクで一番おいしいと言われるクラフトコーヒー屋さん、コギト・コーヒーがあります。

このギロチン、数年前何かのイベントのために作られて、よくできていて評判になったので、記念にとっておかれているもの。
使用実績はもちろんありません。

管理人
海洋博物館全く関係ないですが、ここのお家の猫はとても人懐こくてかわいいです。

近くに猫の餌代を寄付できるボックスがあり、ここになにがしかのお金を入れると、旧市街のねこ達のキャットフード代の足しにしてもらえます

このお庭的な部分の壁、ギロチンの手前の方に、壁沿いに上にいく階段がついています。
これが上述の城壁につながる階段なので、ここを登っていくと海洋博物館にたどり着くことができます。

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