WHO、世界保健機関の統計によると、クロアチアは国民一人あたりのアルコール消費量、世界トップ 10 の常連。知られざるお酒大好き国家なのです。
今回は、クロアチアでよく飲まれるお酒、そしてお酒にまつわる習慣やマナーをご紹介します。
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クロアチアでよく飲まれるお酒とは?
クロアチアでよく飲まれるお酒といえば、なんといってもビールとワイン。
いずれも、地元のビール、ワインが人気で、食事のお供として、そして単体でも、日常的に嗜んでいる人が多いです。
クロアチアでは、ワインの方が生産の歴史も長く、知名度も高いのですが、人気という面ではビールのほうが上かな〜、という感じ。
ビール好きの多さは、もしかすると、地理的にドイツに近く、また、ハプスブルグ帝国の一部だった歴史が長いのも影響しているかもしれません。
また、最近クラフトビールの大流行でおいしいビールが増えているので、それも理由の一つかも。
蒸留酒、ラキヤも広く楽しまれていますが、こちらは日常的に飲むというより、ホームパーティやお祝い事などの時だったり、風邪をひいたとかお腹が痛いとかの時に民間療法的に飲む、ということが多い印象です。
ビール
クロアチアでも日常的に親しまれているビール。
クロアチア最古のブリュワリー(醸造所)創業はなんと 1664 年、日本ではなんと江戸(寛文)時代!
大量生産が始まる前、自家醸造されていた歴史も含めれば 1000 年を超えるスパンで愛されてきたクロアチアのビールですが、実は今、クラフトビール革命の真っ最中。
数年前の規制緩和を受け、個性的なこだわりのクラフトビールを造るマイクロブリュワリーが雨後の筍のような勢いで増え続けています。
特にザグレブのクラフトビールシーンはかなり熱い!
クラフトビール好きで、数日間滞在される方、ぜひ、トゥカルチチェバ通り(Tkalčićeva Ulica または Ulica Ivana Tkalčića)沿いのカフェやレストラン、パブなどで色んな種類を試してみてください。
Zmajska(ズマイスカ)、Nova Runda(ノヴァ・ルンダ)、The Garden(ザ・ガーデン)、Medvedgrad(メドヴェドグラード)、Vunetovo(ヴネトヴォ)など、個性的なブリュワリーのビールの飲み比べ、大変楽しいです。
メドヴェドグラードはザグレブだとスーパーなどにもけっこう置いてあります。
ノヴァ・ルンダは基本的にタップで売る(パブなどで注いでもらうタイプ)姿勢なのでボトルでの販売はあまりない(最近やるという話がでてきたくらい) → バーにあったら即飲むべきですね。
クロアチアのビールについては、別途こちらにもまとめてあるので、ご興味あったらどうぞ → クロアチアのビール
大手ビールも、外国産ビールも、クラフトビールもたくさんあるクロアチア。
ビールはちょっと苦手、という方でも、「あれ?美味しい…」と思えるビールに出会えるかもしれません。
ドゥブロヴニクにも最近クラフトビール醸造所+パブ、旧市街にバーができまして、チョコレートのような黒ビールやフルーツのはいった爽やかなものまで楽しめてとても嬉しい😊
醸造所の方は、地元の人ばっかりなので、アジア人の筆者がポッと行くとめっちゃくちゃガン見されます。
メドヴェドグラードの醸造所がザグレブ郊外にオープンした時のパーティーも行きましたが、それも凄まじいガン見攻勢でした。
大事なのはビールです!😄🍺
ワイン
日本ではあまりワインの印象のないかもしれませんが、実はクロアチア、古代ギリシャ時代に始まり、3000 年以上に渡るワイン生産の歴史を持つワイン大国なのです。
ブドウ栽培の歴史が長い上、栽培種も野生種も勝手に育つ地域なので、クロアチア固有種、土着種のブドウを使ったワインが多くあり、さらに地形も変化に富んでいるため、個性的でユニークなレアワインがたくさんあります。
さて、ここで問題です。
- 美味しいワインが、お酒好きな人の多い国で作られるとどうなるでしょうか?
答え
- 自分で飲んじゃう
実際、こちらの友人の様子を観察していると、自分の家用のワインを買う、と言ってお出かけついでにワイナリーに立ち寄り、超巨大ペットボトル(ウォーターサーバーに挿す 10 リットルタンクくらいの大きさ)でワインを購入する様子が見られました。
君とこ、家族 4 人しかいてはらへんやないか…
さて、クロアチアの主なワイン生産地は、ハンガリーと国境を接する大陸側のスラヴォニア(Slavonia)地方、それからアドリア海沿岸のイストリア(Istria)地方、そしてドゥブロヴニクやスプリットのあるダルマチア(Dalmatia)地方。
それぞれ気候、地形が異なるため、どの産地のものを選ぶかで、同じブドウを使ったワインでも全く違う味わいになります。
小規模のワイン生産者も多く、流通がご近所に限られるもの、または自家製で親族内でほぼ消費されるものなども、そう珍しくはありません。
良くも悪くも、びっくりするほど個性的なワインに出会えることが多いのがクロアチアの魅力の一つ。
ワイン好きな方には、ぜひこの面白さを知ってもらって、あちこちで地元のワインを味わっていただきたいです!めちゃくちゃ面白いです。
筆者もすっかりはまってしまいまして、最近はクロアチアに行くと全力でワインを飲んだりワイナリーに行ったり。
下にアクセス数の多い記事をあげておきますので、ご興味ある方合わせてどうぞ。
これからも、ワイナリー巡りに行くたびに記事を増やす勢いでがんばります。
ラキヤ
クロアチアを始め、バルカン諸国で広く親しまれている蒸留酒、ラキヤ。
多くの場合、ワインを搾った後のブドウの皮や果肉を発酵させ、蒸留して作ります。
要するに、イタリアでいうグラッパですね。
ラキヤは、そのままで飲むだけでなく、日本で言う梅酒のような感覚で、いろいろなものを漬け込んでいる家庭も多いです。
ハーブを漬けたものなどは、民間療法における万能薬みたいなものなので、クロアチアのすべてのおばあちゃんが、お家のどこかにこれをしまっておいてあるんじゃないかと思うほどです。
風邪、胃痛、頭痛、倦怠感、喉の炎症、外傷、発熱、じんましん、虫除け、歯痛、食欲不振、食べすぎ、寒くなってきたから車に不凍液入れなきゃ……これらの行き着く先のすべての答えがラキヤ。
「またまたー そんなのおばあちゃん世代の話でしょ」と思いませんか?
これが意外と若者も
また、ラキヤはブドウだけでなく、その他の果物で作ることもあり、さらに、梅酒的なやり方で、シンプルなラキヤにお砂糖と果物/草/花を足して漬け込んだバージョンもあります。
ちなみに、材料によって名前が変わります。
代表的なのは次のようなもの。
- loza(ロザ) → ブドウ
- šljivovica(シュリィヴォヴィツァ) → プラム
- Travarica(トラヴァリツァ) → 各種ハーブ、薬草
- Medica(メディツァ) → ハチミツとプロポリス
- Viljamovka(ヴィリャモヴカ) → 洋梨
- Orahovica(オラホヴィツァ) → くるみ
- Višnjevac(ヴィシュニェヴァッツ) → サワーチェリー
- Rakija od trešnje(ラキヤ・オド・トレシュニェ) → 甘いチェリー
- Rakija od ruže(ラキヤ・オド・ルジェ) → バラ
シュリィヴォヴィツァ、ヴィシュニェヴァッツ、オラホヴィツァ、メディツァ、ヴィリャモヴカあたりは甘くて美味しいので、食前酒、食後酒などとして提供されることも多いです。
自分の家で漬けた、というものをいただくことも時々ありますが、けっこう美味しくて、日本でもやってみようかなーという気持ちになりますね。
カクテル & その他のお酒
カクテルは、地元では日本ほど人気がなく、観光客が多い店のほうが、カクテルを揃えている可能性が高くなります。
わりとどこにでもあるのは、ジントニック、ラムコーク、ウィスキーソーダ、マルガリータなどのメジャーどころで、あとは流行り的にモヒートも見るかな〜…くらい。
その範囲を超えると、たとえメニューに載っていても「わからない、作れない」と言われることもわりとあります。
もちろん、高級ホテルのバーやラウンジ、「カクテルバー」と謳っているような場所であれば、一通りのカクテルを楽しめるでしょう。
ワイン、ビールなどが中心のお店だと、カクテルは限られた種類しか置いていないかもしれません。
なお、カクテルに含めていいかどうかわかりませんが、赤ワインの水割り・ベヴァンダ(Bevanda)、白ワインの炭酸水割り・ゲミシュト(Gemišt)というのはわりとよく飲まれます。
これだと、酔わずにさっぱりとワインを楽しめるので、お酒に強くない人でも安心。
意外と悪くないです。
ついでに: お土産で喜ばれる日本のお酒
クロアチアでは、日本酒は、本気の日本料理店などに行かないとまず見かけません。
知っているけど飲んだことはない、という人が大多数ではないかと思います。
お土産でプレゼントしたことが何度かありますが、あまりピンとこない方が多いようでした。
「水みたい」「ジュースみたい」「匂いが微妙」「甘い」的な反応が多かったです。
なんとなくですが、ダルマチアの方はドライだけど華やかな香りと広がりのある赤、キレッキレだけどコクのある白のワイン、両方アルコール度数高めが人気なので、その好みには確かにフィットしない日本酒が多いかも。
スラヴォニアなど、北のほうが日本酒ウケはよさそう。
ワインもゲヴェルツトラミネールなど、甘さと香りがある優しいワインが人気ありますし。
しかし、万人受けしたものがあります。
それは…
特に、黒糖梅酒とかハチミツ梅酒のようなこってり系は、上記のサワーチェリーのラキヤ、ヴィシュニェヴァッツと割と共通の要素が多いので、美味しいという方が多かったです。
梅酒だと、お土産も紙パックで軽いものが持っていけるので、これはこちらにとってもありがたい。
なお、蒸留酒部門では、むぎ焼酎 → ラキヤみたい、芋焼酎 → 癖がある(好き嫌い分かれる)、泡盛 → ラキヤみたいという感想が多かったですね。
日本ウイスキーもいくつか持っていきましたが、今のところ、筆者の周りでの一番人気はフロム・ザ・バレルでした。
わかってますなー。
ワインメーカーさん達は、日本ワインに興味があるようで、特に甲州やベイリー A など、他にないブドウを試したいという声をけっこう聞きました。
次回はこれらを持っていって、感想を聞いてみようと思います!