「クロアチア」と聞いて「お酒」という言葉が真っ先に浮かぶ方、よくご存知で!実はクロアチア、国民一人あたりのお酒の消費量で、常に世界トップ 20 位圏内常連のお酒好き国家。
クロアチアのお酒といえば、世界の名だたるコンテストの受賞作も数多い高品質のワイン、そしてバルカン半島で広く愛好される蒸留酒、ラキヤ(rakija)が有名ですが、忘れてはいけないのがビール!
長年親しまれる大手ビール会社の定番に加え、クラフトビールが市場を席巻中のクロアチアでは、どんどん新しく個性的なブリュワリーが増加中。ここ 5 年程度で、クロアチアのビール市場がすっかり様変わりしました。今回はそんなクロアチアのビールについてまとめます!
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- 1 クラフトビール革命: 今クロアチアではビールが熱い!
- 2 【大手: ド定番】オジュイスコ(Ožujsko)
- 3 【大手: ド定番 二番手】カルロヴァチュコ(Karlovačko)
- 4 【大手: 三番手】パン(Pan)
- 5 【大手: 最古のクロアチアブランド】オスェチュコ(Osječko)
- 6 【大手: アルコール度数最高】トミスラヴ(Tomislav)
- 7 【クラフトビール: 誕生した年に世界ランキング Top 10 入り】ズマイスカ・ペール・エール(Zmajska Pale Ale)
- 8 【クラフトビール: こだわりまくり。ボトル販売なし、タップのみ!】ノヴァ・ルンダ C4(Nova Runda C4)
- 9 【クラフトビール: スプリット初のクラフトビール】ラブ・バルバ・ペール・エール(LAB Barba Pale Ale)
- 10 おまけ: ビールにまつわるクロアチア語
クラフトビール革命: 今クロアチアではビールが熱い!
クロアチアは知られざるビール大国。国民一人あたりのビール消費量は 2014 年の国際ランキングでは 14 位、国民の半分がビールを日常的に飲む計算になるそうです。オジュイスコ、カルロヴァチュコといった大手の定番ビールにいたっては、お店の軒先のパラソルなどでとにかくよくお目に掛かるので、飲まない人でもなんとなく記憶に残ってしまうほど。
そんな、そもそもビール好き国家のクロアチア。これが数年前の法改正をきっかけに、クラフトビール製造がどんどん盛んになり、今やクラフトビール革命と呼べるほどの波を巻き起こしています。
特にザグレブ周辺ではマイクロブリュワリーが次々に誕生。世界のビール好きがビールを格付けしあうサイト、Ratebeer.com でもかなりの高評価を獲得するビールも数多く生まれています。ビール好きが講じ、自家醸造からクラウドファンディングで資金を集めるブリュワリーなどもあり、とにかく個性豊かで面白いビールが多い。
特に人気のあるクラフトビールブリュワリー(pivovara)はこんな感じ。
- Zmajska pivovara(ズマイスカ・ピヴォヴァラ)– ザグレブ
- Pivovara Medvedgrad(ピヴォヴァラ・メドヴェドグラード)– ザグレブ
- Nova Runda(ノヴァ・ルンダ)– ザグレブ
- Vunetovo Craft Beer(ヴネトヴォ・クラフト・ビアー)– フヴァル島
- LAB Split(ラブ・スプリット)– スプリット
ビール好きの皆さん、クロアチア、特にザグレブではぜひクラフトビール飲み比べを楽しんでください!
【大手: ド定番】オジュイスコ(Ožujsko)
クロアチアビールを語るに、ド定番、ど真ん中のブランドであるオジュイスコ、そして二番手のカルロヴァチュコを外すことはできません(おすすめかどうかはともかく)。まずはオジュイスコ。こちら、クロアチアで売上ナンバーワン、定番中の定番ビールです。
オジュイスコの歴史は古く、生産が始まったのは 1892 年。日本でいうと明治 25 年、奇遇にも、日本でアサヒビールが発売された記念すべき年でもあります。アサヒビールの方は数年で生産を終了しましたが、オジュイスコはその後もずっと生産が続き今に至ります。製造しているのはザグレバチュカ・ピヴォヴァラ(Zagrebačka pivovara)、その名の通りザグレブに拠点をおくビール会社で、2013 年からモルソン・クアーズ傘下となっています。
アルコール度数 5% のラガー、炭酸は弱めで甘みはやや強め。味としてはなんということもなく、大量生産されて日常的に消費されるビール、という感じです。「クロアチアに来たよ」という話の種に飲むにはよいですが、美味しいビールを求めたいのであれば、ずっと後回しにしていいかな、という印象です。
【大手: ド定番 二番手】カルロヴァチュコ(Karlovačko)
クロアチアでのマーケットシェア二番手のビール。ビール生産の歴史はこちらも古く、もともとのブリュワリーの設立は 1854 年、日本で言うと黒船が来航した年に当たります。2003 年以降、現在に至るまでハイネケン傘下になっています。
2014 年から、ハイネケンの意向で、カルロヴァチュコに使用される材料を出来る限りクロアチア国内で調達するというプロジェクトが始まりました。現地の農業の支援のため始まったプロジェクト、経済停滞の続くクロアチアにとってとても意義のあるものとなっています。
ビールのタイプはペール・ラガーで、色は淡いレモンイエローでアルコール度数は 5% 強。軽い飲みくちで、後にほのかに苦味が残ります。販売数は二番手ですが、オジュイスコよりは一般的に受けがよさそうな味。
【大手: 三番手】パン(Pan)
クロアチア大量生産・大量消費ビール三巨頭の三番手はパン。1971 年の創業直後からカールスバーグと協業関係にあり、現在ではカールスバーグ傘下にあります。ビールもわかりやすくカールスバーグっぽいです。
アルコール度数 5% 弱、飲みくちは軽く、かすかに苦味の残る味わい。色は透き通った金色で爽やかです。香りはやや草っぽい感じ。とくにこれという特徴もないですが、癖もなく飲みやすいです。
【大手: 最古のクロアチアブランド】オスェチュコ(Osječko)
オスェチュコはクロアチア最古のブリュワリーで、創業はなんと 1664 年。日本においては、江戸は寛文、江戸第四代将軍家綱の治世にあたります。創業の地、クロアチア北東のスラヴォニア最大の都市、オスィェク(Osijek)が名前の由来となっています。
ビールは伝統的なラガーで、やや甘みがち、アルコール度数は 5% 弱(かなり弱)。人によっては懐かしく感じられる味かもしれません。クロアチア最古のマス生産ビールなので、見つけたら話の種に飲んでみると楽しいかも。
【大手: アルコール度数最高】トミスラヴ(Tomislav)
トミスラヴは、オジュイスコと同じビール会社、ザグレバチュカ・ピヴォヴァラが生産する黒ビール。生産が始まったのは 1925 年。関東大震災の 2 年後、世界恐慌の 4 年前にあたります。
7.5% 弱という、クロアチア最高のアルコール度数を誇るトミスラヴ。香りはキャラメルっぽく、色はしっかり濃い黒褐色。黒ビールとしては割とさっぱりしていて飲みやすく、根強いファンも多い。ただ、ギネスのようなコクを期待すると裏切られます。
しっかりしたビールを楽しみたい方、濃いめのお食事に負けないパンチのあるビールが欲しい方にはおすすめ。悪くないです。
【クラフトビール: 誕生した年に世界ランキング Top 10 入り】ズマイスカ・ペール・エール(Zmajska Pale Ale)
ちょっと生意気そうな、かわいいドラゴンのラベルが印象的なズマイスカ・ピヴォヴァラ(英語だとドラゴン・ブリュワリー)。2014 年に創業され、クラフトビールを売り出したと思ったら、世界のビール好きがビールを格付けし合うサイト、Ratebeer.com でその年の Best New Brewery 第 9 位に選ばれたという伝説的なブリュワリーです。
現在、4 種類のクラフトビールを販売しており、特に人気なのが Zmajska Pivovara Pozoj IPA(ズマイスカ・ピヴォヴァラ・ポゾイ・インディアペールエール)と Zmajska Pivovara Porter(ズマイスカ・ピヴォヴァラ・ポーター)。
IPA の方は、ホップの香りがまず来て、飲んでいる時はオレンジやグレープフルーツなどのシトラス系の爽やかさと針葉樹の葉っぱのような青さがあり、後味に苦味を残していきます。何でしょうか、なんだかちょっと目が覚める感じ。おいしいです。
ポーターはまだ飲んでいないのでわかりませんが、IPA がこれなら期待できる!最近飲めるところが増えてきているようなので、探してみようと思っています。
これは、見つけたらとりあえず試してほしいレベル。ビール好きのかた、ぜひ。ドゥブロヴニクのパブなどでも最近良く見かけるようになってきましたよ。
【クラフトビール: こだわりまくり。ボトル販売なし、タップのみ!】ノヴァ・ルンダ C4(Nova Runda C4)
ノヴァ・ルンダは、クロアチアのクラフトビール革命を牽引するブリュワリーの一つ。ビール好きで自宅醸造から入った若者 2 人が創業、「ジプシー・ブリュー」と称して、他のブリュワリーの一画を借りて本格的に作り始めたという、「本当にビールが大好きです」という、職人を通り越してビールマニア全開なブリュワリーです。
なんでも、ヨーロッパ系のラガーが一人勝ちするクロアチアビール市場を変えたいんだそうです。タップから注ぎたてのドラフトの美味しさときたらたまらんよね!ということで、ボトルでの販売は一切なし。バーでタップからサーブされる形にこだわっています。将来的には、より伝統的なキャスク・エールに挑戦したいんだとか。
ノヴァ・ルンダの一番人気は Nova Runda C4 IPA。濁りのある琥珀色で、フルーティながらコクがあり、後をひく苦味が癖になります。一番最初に作った製品でもある APA も人気の商品。こちらも濁りがあり、色は IPA よりも濃く、オレンジがかった飴色。見た目の影響かもしれませんが、ややキャラメルっぽい香りを感じます。モルトがしっかり感じられるのにバランスが良く、非常においしいです。
こちらも、見かけたらとりあえず飲みましょう。個人的にはクロアチアで一番美味しいのではないかと思います。残念ながら、ドゥブロヴニクではまだ提供されていません。ザグレブ、シベニク、プーラ、スプリット、マカルスカあたりにいる間にぜひどうぞ。Nova Runda のサイトで、どこのお店で何が提供されているか確認できます。
【クラフトビール: スプリット初のクラフトビール】ラブ・バルバ・ペール・エール(LAB Barba Pale Ale)
こちらは、スプリットで最初のクラフトビールブリュワリー、LAB Split のペール・エール。暖かい、海岸沿いのダルマチア発だからなのか、上記 2 つにくらべて夏向きというか、爽やかさのある味わい。
ホップのバランスにこだわりがあるようで、3 種類を使って香りや苦味をうまく調整しているそうです。味わいとしては、飲み始めにほどよい苦味がきて、味わいは軽いフルーティーさがありながらしっかりしたモルトのボディもあり、最後にくる軽い苦味がさっぱり、スッキリした後味を残します。暑い時にピッタリ。
こちらは、上記 2 つほどの個性はないにせよ、ダルマチアにいる間に見かけたら、美味しいご当地ビールとしてぜひお試しあれ。ドゥブロヴニクには何店かで提供されており、直営のカジュアルシーフードレストラン、Barba もあります。Barba、食べ物も美味しいです。
おまけ: ビールにまつわるクロアチア語
- ビール: pivo(ピヴォ)
- クラフトビール: craft piva(クラフト・ピヴァ – 別の言い方もありますがこれで OK)
- ブリュワリー: pivovara(ピヴォヴァラ)
- 乾杯!: Živjeli!(ジヴィェリ!)
- 「ビールください」 → Molim Vas, pivo.(モリンヴァス、ピヴォ)
Molim Vas というのが英語のプリーズに近い意味の表現なので、これを言ってから品物を伝えると注文できます。運んできてもらったら「Hvala(フヴァーラ: ありがとう)」とお礼をいいましょう。