マリン・ドゥルジッチの家: House of Marin Držić

中世において、自治権のある独立国家だったドゥブロヴニク。奇跡的な外交力と、貿易で得た莫大な富を元に、キリスト教圏とイスラム教圏の間をうまく立ち回り、14 世紀 〜 17 世紀にかけて、この規模の都市国家としては驚異的な文化的・政治・経済的発展を遂げました。

今もなおクロアチア最高とも讃えられる詩人/劇作家、マリン・ドゥルジッチが活躍したのも、「ドゥブロヴニク・ルネサンス」とも称されるこの時代のこと。今回は、このマリン・ドゥルジッチを記念して作られた博物館、「マリン・ドゥルジッチの家」をご紹介します。


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iStock. by Getty Images ポートフォリオ:Mari_mjx
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マリン・ドゥルジッチとは

マリン・ドゥルジッチは、15 〜 16 世紀にかけて、中世には独立国家だったドゥブロヴニク(ドゥブロヴニク共和国 ※イタリア名ではラグサ共和国)で活躍した詩人/劇作家。

当時のドゥブロヴニク共和国は、クロアチアにおけるルネサンスの中心地。詩人、作家、画家、彫刻家など、クロアチアを代表する芸術家がこぞってドゥブロヴニクに集まっていたのでした。

そんな中でも、マリン・ドゥルジッチの才能・才覚は群を抜いていたようで、クロアチアのみならずヨーロッパの他の地域でも、かれの作品が演じられた記録が残っています。現在でも「クロアチア最高の劇作家」と称され、クロアチア政府は優れた劇文学や舞台脚本に対し、彼の名を冠した「マリン・ドゥルジッチ賞」を授与しています。

しかしこの方、才能豊かな反面、自由で形式にとらわれない性格でもあった模様。

厳格な家庭に生まれ、教会法を学ぶためにイタリアのトスカーナに留学させられ、ついには権威ある神学校の学長にまでなったドゥルジッチ。そこまで上り詰めたというのに、本来学業は好きでなかったようで…。我慢しきれなくなって学問の世界のキャリアを捨て、ドゥブロヴニクに舞い戻って作家になったそうです。

しかし、破天荒な動きはそこでも止まることはありませんでした。

ドゥブロヴニクに戻ってからも、放浪の旅にでたり、無法者グループと親しく交流したり、ドゥブロヴニク政府の転覆を企んでメディチ家に支援を依願する手紙を送ったり、多額の借金を作って借金取りから逃げ回ったり…。「神学校の学長」という固い前歴が嘘のような、なかなかやりたい放題なエピソードが数多く残っているのも、ドゥルジッチの魅力の一つと言えるのかもしれません。
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マリン・ドゥルジッチの家(…?)

博物館となっている「マリン・ドルジッチの家」。ここ、実は本人が住んでいた家ではありません。

え!!というまさかの展開なのですが、ここは、なんというか記念館的なもので、建物も展示品も、本人に特別な縁があるわけではないのです。ネーミング紛らわしい。

しかも、こちらの博物館。ネーミングだけでなく、展示もかなりフリーダム。

ドゥルジッチの自由な精神をアートで表現したのかな?というような、独特の空間です。まあ、平たく言うと、何がなんだかよくわからない。もう、「〜 の家」と銘打って、本人と関係のない部屋や物を展示する勇気に敬意を表したい。そう思わせる、そう思うしかない空間なのです。

これといってマリン・ドゥルジッチについてしっかり学べるわけでもなく、本人の遺物などが保存されているわけでもなく、彼の作品のあらすじや登場人物を知ることができるわけでもなく。肖像画が残っていないので、本人像ですら、「たぶんこんな見た目んじゃないかな〜」で作ってしまう、圧倒的な懐の広さ。

「博物館って何なんだろう」という、レゾンデートルに関わる深い問いを全力で投げかけてきます。

とりあえず、あまりにもわけが分からなさすぎてユニークな場所ではあるので、行ってみると意外と楽しいかもしれません。

ドゥブロヴニクカードを持っていて、時間がたっぷりあって何をしていいかわからない状態の時、あるいは好奇心旺盛な方、箸が転がっても笑い転げてしまう方、シュールなものに理由なく惹かれてしまう方にはおすすめです。ただ、このためにわざわざ入場料を払う必要は、多分、ないかと…。
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アクセス

ストラドゥン(プラツァ通り)から枝分かれする小路のうち、最も広い Široka(シロカ)通りを登城壁側に向かって進みます。道が急激に細くなるところにマリン・ドルジッチの家があります。

開いている間は、入り口に Dom Marina Dužića と書いた看板が出してあると思いますので、そちらを目印にどうぞ。


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おまけ: マリン・ドゥルジッチ像(ラッキースポット)

ドゥブロヴニク旧市街には、もう一箇所、マリン・ドゥルジッチの名前を関した場所があります。

それが、旧総督邸の並びの建物、マリン・ドゥルジッチ劇場。外から見る印象と内部は随分違い、中には、いかにもヨーロッパの劇場らしい絢爛豪華な空間が広がっています。劇場入り口の横は、グラドスカ・カヴァナ・アルセナル(※英語に訳して、シティ・カフェと呼ぶローカル民多し)です。

さて、この劇場入口付近に、腰掛けて、本を膝の上で広げた姿のブロンズ彫刻があります。こちら、マリン・ドゥルジッチ像。もちろん、こちらも、肖像画がないため、あくまで想像上の姿ですが…。

さて、このマリン・ドゥルジッチ像、近づくと、鼻がピカピカに金色になっていることに気づくはず。これ、なでると「頭が良くなる」「雄弁になる」、またはざっくり「なにかいいことがある」と言われていて、皆がなでていくからなのです。

ドゥブロヴニク旧市街にいったら、どうぞゲン担ぎに触ってみてくださいね。中世の名作家のような雄弁さが身につくかもしれません。
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