激突!タクシー vs. Uber in クロアチア: 気になる結末は?

Uber(ウーバー)といえば、日本にも参入し、一時期話題となった、アメリカ発のシェア型配車サービス。2015 年、Uber はクロアチアにも進出し、徐々に利用者を増やし、サービス提供地域も拡大してきました。

こうなると、面白くないのは既存のタクシー業界。Uber のサービスインからずっと犬猿の仲となっていましたが、2017 年夏、ついにこれが爆発。大規模な抗議行動が行われました。

世界を席捲するシェアリングエコノミーの旗手、Uber とタクシー業界の激突、その結末は?


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クロアチアの Uber

Uber とは、一般の人が、自分の車を使ってタクシーサービスを提供するためのプラットフォーム。
Uber に登録を行うことで、ドライバー、またはユーザとしてタクシーサービスを利用することができるようになります。

「◯◯に行くなら、別荘があるから、格安で使っていいよ」「空港まで車で送ってくれない?もちろん、謝礼は払うよ」といったやり取り、知人や家族間ならありえますよね。
これを、未知の他人同士が気軽に行えるよう、ルールを設け、予約や配車の仲介と支払いの代行を行っているインターネット上のサービス、というとわかりやすくなるでしょうか。

ちなみに日本では、認可を受けずにタクシーサービスを提供することは「白タク行為」として禁じられていますが、世界では必ずしも違法行為にはあたりません。
そのため、Uber は世界の様々な国や地域に参入してユーザを増やし、既存タクシー業界との熾烈な競争を繰り広げられています。

Uber がクロアチアに進出したのは 2015 年。

首都のザグレブからサービスインし、現在ではスプリット、ドゥブロヴニクまでサービス提供範囲が広がりました。
また、当初は配車だけでしたが、2017 年には Uber Boat、高速ボートによるサービスも開始。
ますます利便性が高まっています。

スマホやパソコンで予約すれば、好きな時間に好きなところにピックアップに来てもらえる柔軟性、お手頃な価格、ドライバーのレビューを確認できることなどから、地元住民の間でも、Uber 利用者は確実に増加中。
また、旅行者にも、Uber を自分の地元で日常的に利用している人が多くいます。
旅先で慣れない外国のタクシーを使うより、地元と同じように Uber を使いたいというニーズが生まれるのも、当然のこと。

このように、ユーザからの指示や評価は上々の Uber ですが、利用者を奪い取られる形となる既存のタクシー業界にとっては、これは大きな脅威。

また、Uber はあくまでも仲介業に徹することで、本来タクシー業者に課される法律が適用されず、グレーゾーンでビジネスを行っているのも事実。
そんな Uber へのやっかみや怒りも相まって、既存タクシー業界と Uber、クロアチアはもちろん、世界中で熾烈な対抗戦が繰り広げられる展開となっています。


激突!その時タクシー業界は…

Uber が着実にユーザ数を増やす中、クロアチアのタクシー業界の不満は募るばかり。2017 年夏、ついに、前例のない規模の抗議行動が行われることとなりました。

この時、タクシー業界が取った驚きの行動とは…

…………

「デモを行う」!!

…………

…と、これだけなら、さほど驚くほどのことではなかったのですが、これが、ただのデモではありませんでした。

なんと、クロアチアのタクシー業界、よりによって 7 月末という、観光シーズン絶頂、最大規模の観光客が国内を移動するこの時期に、全国規模でデモ行動を起こすという暴挙にでたのです。

しかも、このデモ、プラカードを持って練り歩くというような生易しいものではなく、主要な道路上に車を停めて交通をブロックしたり、空港の駐車場スペースを埋め尽くし、他の車の入場を阻んだりという、大迷惑な内容。

7 月 21 日に行われた最初の大規模デモでは、ザグレブ、スプリット、プーラ、ドゥブロヴニクなどの主要都市周辺で大渋滞が発生、全国的に交通が麻痺
。続く 28 日も同様でしたが、この時は、さらに影響が大きく、ドゥブロヴニク空港に至っては、数時間に渡って完全に封鎖されるような事態にまでなってしまいました。

当然、飛行機に乗り遅れる乗客が続出。
また、苛立った人々がタクシーの運転手と喧嘩になり、逮捕者が出る騒ぎも発生しました。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。


これはさすがに自業自得。抗議行動の結末

さて、クロアチア全土を巻き込んだ、この度のタクシー業界による一斉デモ。
当然のことですが、世論を一斉に敵に回す大炎上となりまして、自らの首をギュギュッと締める結果を招きました。

まず、飛行機に乗り遅れた乗客、仕事や学校に行けなかった一般市民、空港やホテルに缶詰になり、身動き取れなくなった観光客、国境を通過する予定だった多くの人々、全員がタクシー業界に激怒。
また、ピークシーズンに、GDP の 20% 近くを占める主要産業、観光業に水を差された関連業界も黙ってはいられません。

政治家も巻き込み、「タクシー業界 vs. Uber」だったものが、「タクシー業界 vs. それ以外の全員」となってしまいました。

実際、このデモの前までは、法のグレーゾーンで営業する Uber を必ずしも快く思っていなかった人も確実に存在し、タクシー業界への同情論も聞かれたものです。
新しいものに懐疑的な住民感情もあり、筆者の周りでも「Uber ってどうなの」と、利用したこともなく、利用する気もあまりないけど一応興味はある…という程度だった人が多かった印象。

しかし、今回のデモで、この状況は一変。タクシー業界への怒りの表明として Uber アプリをダウンロードする人が続出しました。

ただ、現在、Uber のドライバーが正規の認可を受けずに営業していることは事実として、Uber アプリのダウンロードは一時的に停止されています。
しかし、これは後日の法改正に向けた一時的措置らしく、現在、何らかの形で Uber の合法化を実現するため、急ピッチで法整備が進められているそうです。

なお、すでにダウンロード済のアプリ、および Web サイトからは、これまで通りクロアチアで Uber を利用することは可能。

旅行の多い方にとっては、世界の様々な都市で、同じように利用ができ、なにかと便利なので、これを機に利用してみるのもいいかもしれませんね。

個人的には、シンガポールやオーストラリアなどに滞在する際よく Uber を利用しており、全般的に印象はよいです。
新しい旅先で Uber があれば移動オプションの一つとして検討しますし、クロアチアでも、Uber が始まってくれて喜ばしい限り。
利用する前にドライバーのレビューを確認できる点も気に入っています。


後日談

最終的に、クロアチアでは、Uber で事業を行う = 個人タクシーを営業する、という形に落ち着きました。
簡単に言うと、個人タクシー開業のハードルを一気に引き下げ、Uber の運転手たちを正規のタクシー事業者として登録させる、という解決策をとったわけです。

現在では、Uber の運転手になりたい場合、試験を受けて資格をとり、正規にタクシーとしての登録をだし、タクシーサインを自分の車に取り付けることで営業を開始することができます。
Uber のスマホアプリがメーターの役目を果たすため、車にメーターを取り付ける必要はなし。
正規のタクシー業者としての登録が行われるため、政府としても税金を正しく徴収することができます。

また、利用者側からしても、全くの知らない人の車に乗り込むより、タクシーのサインの出ている、正規の業者の車を利用するほうが安心して利用できるというもの。
この結果、タクシー業界側も Uber 事業に登録して、その配車システムを利用することができるようになって、たいへん健全な形になりました。

クロアチア、政治・行政に関しては正直問題の多い国なんですが、今回のこの裁き方はお見事でした!