ドゥブロヴニク旧市街のメインゲート、ピレ門の外、黄色のデコラティブな手すりのあるバルコニーが印象的な、ひときわ目を引く建物があります。これが、ヒルトン・インペリアル・ドゥブロヴニク。
ドゥブロヴニクの近代ツーリズム発祥の地ともされる由緒あるホテルです。
今回は、このヒルトン・インペリアル・ドゥブロヴニクについて、宿泊体験のレビューを交えてご紹介します。
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ヒルトン・インペリアル・ドゥブロヴニクの歴史
旧市街ピレ門のすぐ外に、金色の手すりが特徴的な印象的な建物があります。
これがヒルトン・インペリアル・ドゥブロヴニク。
ドゥブロヴニクにとって、ちょっと特別なホテルです。
このホテルのオープンは 1897 年。オープン当初はグランド・ホテル・インペリアル(Grand Hotel Imperial)であり、ヒルトンではありませんでした。
このグランド・ホテル・インペリアルは、ドゥブロヴニク初の近代的なホテル。なんと、ドゥブロヴニクで最初に電気が通ったホテルなんです。
ドゥブロヴニクの近代のツーリズムは、ホテル・インペリアルのオープンを持って幕を開けたと言われる、文字どおり、ドゥブロヴニクを代表するラグジュアリーホテル。
それがこのグランド・ホテル・インペリアルでした。
ドゥブロヴニクの誇る最高級ホテルとして、数多くの VIP に愛されてきたホテル・インペリアル。
伝説的なエピソードとして特に有名なのが、「王冠を賭けた恋」で知られるイギリスのエドワード 8 世。
エドワード 8 世はお相手のウォリス・シンプソンとのバカンスでドゥブロヴニクを訪れてここに滞在し、お庭でダンスをしたりして、幸せなひとときを満喫されたそうです。
なお、Hilton 系列のホテルととなった今でも、こちらは変わらず超一流。Hilton に加わったのは 2001 年、ごく最近のことですが、こちらは Hilton ブランドの中で最も評価の高いホテルに贈られる Connie Award を 5 回も受賞しています(2015 年にも受賞)。
さて、そんな華々しい名声を欲しいままにするホテル・インペリアル。実はその裏に悲しい歴史を抱えています。
1991 年のクロアチア独立戦争の際、この美しいホテルは攻撃の対象とされ、激しい砲撃をうけて炎上。
戦争の災禍を逃れ、世界遺産であるドゥブロヴニクは安全だと信じて、多くの近隣住人が避難してきていた場所であったにも関わらず…。
スルジ山にある戦争博物館で、このホテルが炎上している写真、映像を見ることができますが、なんとも、心に突き刺さる風景です。
戦争が終わってしばらくは、ホテル・インペリアルは廃墟のように荒れ果てた姿のまま放置されていましたが、Hilton がこれを買収して復興。
しかし、買収されたとはいえ、このホテルはドゥブロヴニクの栄華と痛みの象徴的な存在でもあります。
そのような歴史に経緯を表し、正式にヒルトン・インペリアル・ドゥブロヴニクとなった今も、往年のデザインのまま、Hilton というサインは入り口にごく控えめに掲示されるのみにとどめられ、かわりに Grand Hotel Imperial のサインを建物正面に大きく掲げて営業が続けられています。
宿泊体験記
お部屋と眺望
ヒルトン・インペリアル・ドゥブロヴニクは、ドゥブロヴニク旧市街の正面玄関、ピレ門前のバスターミナルからすぐのところにあります。
ピレ門までは徒歩で 1 〜 2 分。
スルジ山に向けた急勾配が始まるポイントにあるため、階段はあまり登らなくていいのに、視界を遮るものはなく、展望は抜群。
シービューのお部屋からの眺めは文句なしに素晴らしい。
テラスに出て見渡せば、ロヴリェナツ要塞と城壁に囲まれた旧市街、それにアドリア海が一望でき、「ああ、今ドゥブロヴニクにいるんだ」という実感が改めて胸に迫ってきます。
この眺めがあるので、こちらに滞在される場合は、ぜひにもシービューのお部屋をお勧めします。
スルジ山ビューのスイートルームも間違いなく快適ではありますが、部屋のグレードを下げてでも、シービューのお部屋を選んだ方が気持ちよく滞在できるくらい良いです。
筆者はドゥブロヴニク滞在中、休憩、着替え、靴の履き替えなど、日に数回はお部屋に戻ることが多いのですが、こちらに滞在している時は、部屋に戻るたびに「ちょっと休憩」と称してテラスに出、外の眺めを楽しむのが定番。
天気によって様々に変化する美しさがあり、何度見ても飽きません。
アメニティは Hilton 定番の Peter Thomas Roth の Mega-Rich シリーズ。
マッサージしながら体を洗える、凹凸のボディバーがなかなかよいです。
なお、今回、プレジデンシャルスイート(もちろんシービュー)も見せていただいたのですが、クラシカルで上品な、往年のホテル・インペリアルの面影を感じさせるいいお部屋でした。
プレジデンシャルスイートとしては比較的小ぶりではあるものの、調度品など、いい具合にエイジングしたヨーロピアンテイストで統一されていて、落ち着ける空間です。
今回の筆者のように女性一人、特にこれという目的もなくのんびりするだけならプレジデンシャルスイートは必要ないですが、ビジネスなど、どなたかお招きする機会があるようなステイでは使いやすそう。
カップルでゆっくり時間を楽しむにも向いたお部屋だと思います。
シーズンオフはお値段もさほどでもないので、季節外れの大人のバケーションにぴったりなのではないでしょうか。
エグゼクティブラウンジ
エグゼクティブラウンジは、以前は 4 階だったものが 1 階に移動しました。
軽食と飲み物がおいてあり、朝はブレックファスト、夜はワインなどの提供も。
調度品は青系の落ち着いたトーンで、人がいない時など居心地良くすごせます。
ただ、シーズンに入って混雑してくると、夜のカクテルの時間のエグゼクティブラウンジは、年配の紳士淑女でかなりいっぱいになることも。
一人でいってぼーっとしづらい感じになるので、混雑を避けてうまく利用するのがよさそうです。
ごはんのこと
ドゥブロヴニク滞在中は、あちこちのレストランでご飯をためしてみるのも楽しみの一つ。
わざわざホテルでご飯を食べなくても…ということもあり、そんなには使わないんですが、天候が良くない時など何度かホテルのダイニングを利用しました。
こちらの地下 1 階(とは言っても、道路から見ると 2 〜 3 階くらいの高さ)にあるレストランポラット(Porat)、朝食のみで訪れる方が多いと思いますが、普通のお食事もおいしいです。
サービスもフレンドリー、プロフェッショナルでとてもいい。外が土砂降りでもそれはそれで「しょうがないから今日は Porat でご飯だな!」と前向きに地下に降りていけるレベルです。
実際、Porat、なかなか優秀なレストランだと思います。
地元の食材を使い、ワインもクロアチア産のよいものが揃っていますし、同時に国際ブランドのホテルのメインダイニングらしい安定感もある、なんというか優等生的なレストラン。
長期滞在していて、ローカル色の強い食事が続いてちょっと飽きた時など、気分転換に重宝します。
個人的なおすすめとしては、インペリアル・バーガーとローカルのプレミアムワイン、ディンガチ(Dingač)の組み合わせ、すごくいいです。
相性ぴったり。
ちなみに筆者はバーガー好きで、ホテルのメインダイニングの好き嫌いを判断するのに、バーガーにワインの組み合わせを基準に使うという習性を持っています。
好きなものを好きな方向性の味で出してくるところは、他のものを食べてもひどいハズレにはなりにくいからです。
なお、朝食ブッフェは地元のビジネスピープルや紳士淑女にもよい評価をうけていて、パワーブレックファスト、パワーブランチ的な使い方をしている方もみかけます。
テラス席が気持ちいいので、テラスにでてゆっくり朝ごはんがおすすめ。
フィットネスセンターとプール
フィットネスセンターとプールは地下にあります。
このフロアに降りるエレベーターは廊下の端、正面入り口の反対側。
レセプションから部屋へ上がるエレベータはこのフロアには降りられないのでご注意を。
さて、エレベーターを降りるとまず見えるのがスパとフィットネスセンターのレセプションとフィットネスセンター。
タオルはレセプションで貸してくれますし、ウォーターサーバーもあります。
レセプションの奥に更衣室、更衣室を抜けると室内プールがあります。
プール入り口にはサウナ。
水着で入ります。
プールの天井はガラス張り、地下とは思えない明るく気持ちのよい空間です。
プールには屋外からのアクセスも可能。
ポラットの脇を通って庭を奥に進むとサンデッキがあり、ここにプールに降りる階段がついています。
暖かい季節には、プールから上がってきて太陽を楽しむことができるようになっているんですね。
フィットネスセンターは小さいですが、一通りの器具は揃っています。
人がいない時間帯を狙って利用すれば小ささもさほど気になりません。
ドゥブロヴニク周辺にはあまりジムらしいジムがないので、旅先でも運動必須な方には便利といえるでしょう。
トレーナーもレセプションもフレンドリーで話しやすいです。
アクセス
ピレ門前のバスターミナルで、ピレ門に背を向け、右手、スルジ山側を歩きます。
そして、一番端のバス停のところにある小さなカフェのオープンテラスを横断。
テーブルは出ていますが、ここを人が通ることはすでに前提となっているので、遠慮せずどうぞ。
突き当たりに手すりのついた短い階段がありますので、これを登ります。
すると、ベンチがいくつかある遊歩道のような場所にでるので、これをそのまま直進。
突き当たりにある階段を上ると、ヒルトンの正面玄関に出ます。
なお、この遊歩道に登らず、普通に道路を通っていくことももちろんできます。ですが、この部分、歩道がとにかく狭い。
歩道上で人がすれ違うこともできず、どちらかは車道に降りないといけません。その上交通量はそれなりにあり、しかも上り坂。
荷物があったり、お子さんがいたりすると大変なので、ピレから行くなら、カフェ横断 → 遊歩道ルートをお勧めします。